現代あえてスペースチャージによりラジオを作るならば、珍しいというだけではコンセプトが薄く、興味本位で終わってしまいます。

そこで「電池による低電圧動作」と「ポータブル」がキーワードと考えました。大量の電池による「高圧」動作では、せっかくの意外性や面白味も、トランジスタとの比較で影が薄くなります。

ところでスペースチャージ専用管である12K5は、12Vで0,45Aというヒーター定格が必要で、なんと6V6の2倍、6L6と同等の電力になっています。

これはこの球が車載用という、言わば発電機付き環境を前提としているからで、電池動作には向いていないといえましょう


    


それでもこの球を入手すべく「ebay」で落札した直後、皆様ご存知のサイト「ラジオ少年」で、より良心的価格により販売しているのに気付きました。しかし時すでに遅く、ペイパルで引き落とされていました。

一方電池管は、たいていG3とカソードが内部接続され、スペースチャージ接続管として使えません。そこで目を付けたのが、6,3V 0,15Aで点火される6AK6です。

ヒーター電力は12K5の6分の1ですが、計測の結果増幅度が低く、6AS6同様150mAヒーターシリーズは、あまりスペースチャージには向いていないようです。

そんなときふと6EJ7のSLVCCCカーブを思い出しました。たしかあの球はG1をマイナス0,6Vにしたとき丁度良い特性が得られました。


           


つまりSLVCCCでEg1をマイナス側にしておき、それを動かせば増幅作用が期待できるのではないでしょうか。

名付けて超低電圧5極管接続(SLVPC:super low voltage pentode connection)。実際は4極管ですが、特性から5極管としました。SLVCCは新しい発見ではなく、スペースチャージ接続の一部といえるかもしれません。

早速下の図のような結線で測定をすることにしました。グリッド電圧は0,1V刻みですので、正確Vさを期して小数点以下2桁以上の精度を持つ電圧計で計測します。


                 


各サンプルの様子は下の特性カーブのようになりました。いわゆるスペースチャージ接続と異なる点は、3極管特性ではなく5極管特性である点で、Gmは4〜5mS程度と充分な値です。

バイアス電圧が7,2Vとなっているのは、電源用電池に3,7Vのリチウムイオン電池(単3をひと回り大きくしたタイプ・3000mAh)を、2個直列にして7,4Vで使う予定だからです。


   


   


いっぽうループ特性のものもありましたが、エージングによってjかなりカイゼンされました。エージング無しから24時間、72時間経過したものを載せます。また6EH7も測ってみました。


   


   


SLVPCはSLVCCC同様固体のバラツキが大きく、リモートカットオフタイプが有利なようです。また6EJ7と6EH7以外にSLVPCに適している専用管は、今のところ見当たりません。

そんな折、ついにG3が独立している電池管を知りました。ロシアから来たサブミニチュア管1J24B(1SH24B)もしくは1J29B(1SH24B)で,オークションにありました。

早速購入しようとしたのですが、この球、かなり以前にebayで大量購入したような気が・・・・。とりあえず1P24Bが10本で12,5ドルだったので、買ってしまいました。

数キロボルトから10ボルト以下まで、真空管は私にまだまだ奥深い世界を見せてくれています。楽しいなあ。けど金がかかって困るなあ。



つづく


.
その2 スペースチャージワールドの新たな展望